『クワイエットルームにようこそ (監督 松尾スズキ)』 〜繋がることができない人のかなしみ

「こころの病」とみなされている人たちがいる。 もちろん、薬物療法をはじめとした医学的管理を絶対的に必要としている人たちもいる。けれども、世間になんとか折り合いをつけて生きている人たちとそれほどかけ離れたところがない人たちもたくさんいる。逆に…

 医療者の勘違い〜自己管理とは?(後編)

私が糖尿病を診療するようになって、既に20年以上になりますが、最初の10年余りは、患者さんの血糖コントロールが思うようにいかず、いろいろ悩んだものでした。 当初は、食事に関しての分析や指導を栄養士さんに頼り切っていたことが原因ではないかと思い込…

 医療者の勘違い〜自己管理とは?(前編)

高血圧症、糖尿病、高脂血症、メタボリック症候群等々、普段の生活習慣が発症に関与している病気を生活習慣病といいます。 生活習慣病といえども、その発症には遺伝的要因や年齢による生理的な変化も大いに関係しています。しかし、生活習慣病の予防や治療を…

 沖縄での集団自決に関する教科書検定について思うこと

太平洋戦争末期、沖縄で起こった集団自決に軍の強制があったか否かということで文科省の教科書検定が問題になっている。 教科書によって表現はまちまちだろうが、概ね「日本軍が住民の集団自決を強制した」という記述が、検定を経て「住民は集団自決に追い込…

 テロ特措法について思うこと

先日、安倍総理が辞任会見を行っているところを病室のTVで偶然眼にしました。あまりの唐突さに少し驚きはしましたが、時期を選ばない辞任のタイミング、安倍総理の表情や力のない言葉などから、これ以上総理の職を続けることが難しいということは十分に画面…

 世界陸上2007を観ながら思ったこと

小学生の頃、運動会で一番みんなが盛り上がった競技はクラス対抗リレーだったように思います。今はクラス全員で走って速さを競うことが多いようですが、私が小学生の頃は、クラスで代表を4人決め、4×トラック1週で競ったものでした。 運動のできる子は、当時…

 星野道夫の命日に生命について考えてみた

1996年8月8日、アラスカの自然を撮り続けた写真家 星野道夫が、取材先のシベリアでヒグマに襲われ命を落とした。 みずみずしく息づくアラスカの姿を写し出した星野の写真はどれも素晴らしいものであるが、アラスカで生活しながら綴られた多くの著述も、その…

 『アヒルと鴨のコインロッカー』(伊坂幸太郎)〜意識が翻弄される面白さ〜

自分がいま生活している世界は、自分の五感で感じ取った情報を元に、自分の意識の中で再構成され、認識された世界である。それは、自分と同時に同じ事実を経験したひとに認識されている世界と、殆どの場合、それほど違うものではない。 しかし、感じ取ったり…

 一からの出直し

自分の経験を、統計的にも、論理的にも、それなりに整理していく習慣がつけば、なるほど経験とは役に立つものである。経験に照らし合わすだけで大きく道を踏みはずす危険もないし、殆どのことはそれで事足りるようになる。 他方、経験が乏しい頃には当たり前…

 こころが自由であること

3月末で16年間勤めた職場を退職した。 辞意を初めて伝えたのは、確か平成17年9月頃だったから、辞めるまでに1年半足らずの期間を要したことになる。その間、雇用主との間で「辞める」、「辞めてもらっては困る」と平行線のやりとりが、意味なく繰り返された…

 『悪たれの華』(小嵐九八郎 著)〜情念の爆発する瞬間〜

読書の対象になるカテゴリーは、自然、限られたものになってくる。 私、時代劇は嫌いではないが、時代小説というものを殆ど読んだことがない。苦手というのではない。たとえ目にすることがあっても、視野に入らないという感じだろうか。 このカテゴリーで話…

 スター選手のメジャー流出に想う

かつて野茂英雄が海を渡りメジャーに挑戦した頃、日本の野球は果たしてメジャーに通用するのかということが、まだとりざたされていた。当時、メジャー挑戦ということは、日本の一流プレーヤーにとってさえ、大いなる「夢」でしかなかった。 江夏にとってのメ…

 大人は、本気を見せろ

一連の「いじめによる自殺」の報道をみていて、「ちょっと違うんじゃないか」と危惧を覚える。ひとを自殺にまで追い込んでいく「苛める人間がいる」ということが、最大の問題であるにもかかわらず、「学校はなにをしているのだ」という学校の責任問題に問題…

 『フラガール』〜女たちのプライド〜

ここのところ、フラダンスが静かなブームになっているらしい。そのきっかけとなったのが、映画『フラガール』だ。 MovieWalkerで「作品アクセス」、「見てよかった!」のいずれも1位、もれ聞こえてくる評判も良いものばかりだったので、随分以前から気にはな…

 岡島の憂鬱、中里の戸惑い

今年の日本シリーズ、実のところあまり観戦できていない。が、そんな中、舞台を北海道に移しての第3戦は、途中からとはいえ、じっくりと腰をすえて観戦し、シリーズを堪能することができた。 2人の投手が印象に残った。 岡島秀樹。 岡島は、開幕直前に巨人か…

 不安に駆られる

本業に追われる日々が続き、なかなかまとまったことを考える暇がなくなってきた。10月はまだ一度も更新できていないという体たらく。仕方がないので、不本意ながら本業のことを書くことにする(笑)。 病院に来られる方の中には、実はたいしたことではないの…

    『地下鉄に乗って』(浅田次郎 著)〜せつなくてかけがえのない愛のかたち〜

先日、伯父の通夜があった。 読経の流れる通夜の席で、祖父の葬儀の日のことを何となく思い出した。 寝たきりになっていた祖母をその2年前に亡くした後、祖父は軽い認知症になっていたようだ。下の世話やら食事のわがままやらに両親は振り回され、日毎に疲れ…

   おめでとう! 山本昌

山本昌がノーヒットノーランを達成した。41歳1ヶ月での達成は佐藤義則の40歳11ヶ月を2ヶ月上回る史上最年長での達成だ。 山本昌の一軍初勝利は、当時はまだ地上波でやっていたプロ野球ニュースで観た。 いきなり現れたこの無名の若者のピッチングは、鮮烈に…

   PSGに何を賭けるのか?

プロ野球のレギュラーシーズンはとても長い。その長いシーズンを戦い抜いてやっと1位になったとしても、プレーオフという短期決戦で敗れれば、リーグ優勝を逃してしまう。パリーグのプレーオフは、なんとも理不尽な制度である。 プレーオフは、レギュラーシ…

   映画 『 UDON 』を観て

私はさぬきうどんの本場、香川県の片田舎で生まれた。 香川県出身者の多分にもれぬ大のうどん好きで、たとえ毎日でも、喜んでうどんが食える人間であると自負している。 「これからはうどんだよ。お兄さん、うどん屋を始めなさい。」 お気に入りのラーメン屋…

 高校野球に面白さを求めるのは罪なことなのだ

学生時代にはよく観ていた高校野球だが、今では殆んど関心がなくなってしまった。 平日の昼間は仕事と重なり、物理的に観ることができなくなったというのは勿論だが、プロ野球に比べて技術が洗練されていないことが満足できなかったり、金属バットの効果で、…

 俊敏な守備、美しい守備

私のブログの中では時間が止まったままになっている。止まったついでに(苦笑)随分前の話で恐縮だが、7月15日、京セラドーム(大阪ドーム)に阪神‐中日戦を観に行って来たときの話を書くことにした。この試合を選んだのは前半のヤマ場ということもあったが…

 ひと休みさせてください

自らの仕事の区切りを8月の終わりまでにつけようと考えているのだが……。 仕事のことで頭がいっぱいで、とても重苦しい日々が続いている。 こんなときにブログを書いても、読んでいる方々(殆んど数はいませんが(笑))に不快な思いを撒き散らすだけだろうか…

 悔しい夢

こんな夢を見た。 私の恋人はイノシシだ。 いつも妙に可愛らしい服を着て、頭にもリボンなどをつけているが、似合っていない。 「 何で俺はこいつと付き合っているんだ。 」と思いつつ、待ち合わせ場所にイノシシが現れるたび、にこにこと愛想笑いを浮かべな…

 不登校をめぐって家族のあり方を考えた

朝起きて、電車に乗って職場へ行く。雑事をこなしながら、楽しいことには笑い、気に入らないことには不平をこぼし、1日の仕事が終われば、再び電車に乗って家に帰る。家族とともに寛いだり、家での用事を済ませたりして床に就く。そんな毎日の繰り返し。 今…

 竹島をめぐる日韓の攻防

国境を越えれば、そこには伝統や文化、習慣、宗教、思想や歴史観などの異なる人たちが住んでいる。価値観の異なる国と国とがお互いに利益を得ようと交渉すること、それをひとは外交と呼ぶ。 外交を通じてお互いの価値観を変えることは不可能と考えてもいい。…

 独立リーグの二つの方向性

四国アイランドリーグが存続していくためには、リーグが地域アイデンティティーを高めていくという効用を持つことが必要だろう。 独立リーグの存在が、地域アイデンティティーを高めていく。それは、つまり、お国自慢として「 野球リーグのある生活 」が語れ…

 指導の難しさ

最近、娘が塾に通い始めた。 親としては、受験勉強の大変さや進学校の窮屈な学校生活などを思うこともあって、塾を勧めた覚えはないのだが、何を考えたか楽しそうに通っている。昨日も「友達ができた」と嬉しそうに話してくれた。まぁ、どうせ受験させる気も…

 愛国心とは?教育基本法改正案の危うさ

人はみな異なる価値観を持ってこの世の中に生きている。浄土真宗を信仰し、ブログで1日10,000アクセスを獲得することを目指すAさん。カソリックを信仰し、どうやったら株で大儲けが出来るかを考えるBさん。創価学会を信仰し、地域のボランティア活動に意欲を…

 おめでとう 金本知憲選手

球場で、実際にプレイを眼にして初めて本当の凄みが分かる選手がいる。 阪神の金本知憲選手は、そんな選手のひとりだ。まさに火を噴くような打球と言おうか、金本のバットから跳ね返る打球は速い。とにかく速い。 その金本が904試合連続フルイニング出場とい…