竹島をめぐる日韓の攻防


国境を越えれば、そこには伝統や文化、習慣、宗教、思想や歴史観などの異なる人たちが住んでいる。価値観の異なる国と国とがお互いに利益を得ようと交渉すること、それをひとは外交と呼ぶ。
外交を通じてお互いの価値観を変えることは不可能と考えてもいい。それを承知で、相手の価値観を変えようとするならば、そこには軋轢しか生まれない。お互いに価値観を尊重しあいながら、お互いにとって何らかの利益が得られる着地点を見出していくことが、外交の本道と言えるのではないだろうか。


竹島についてネットで検索してみると、さまざまな歴史的事実を知ることができる。私は韓国語が分からないので、日本語の資料しか見ることができないわけだが、眼にした資料から判断する限り、歴史的にみて竹島は日本の領土のように思われる。
日本人の認識としてはどうなのだろう。
少なくとも、私は竹島のことが載った教科書で歴史を学んではいない。ネットで検索したり、メディアで見聞きしたりして初めて知り得た事実が多い。想像するに、竹島は「 日本のもの 」「 韓国のもの 」「 どちらのものかよく分からない 」と千差万別なのではないだろうか。
しかし、韓国には、日本とは全く異なる、もう一つ別の真実が存在しており、「 竹島は韓国のもの 」という認識を形成している。そして、その歴史認識の載った教科書で学んだ韓国の人々(ほぼ全国民だろう)には、「 日本人は誤った歴史認識を持っているばかりか、強引に独島(竹島)を韓国から奪おうとまでしている 」としか映っていないように報道からは感じられる。
日本がさまざまな資料を列挙して、歴史的に竹島が日本に所属していたという事実を主張すれば、それは日本国内へ向けてのアピールにはなる。しかし、韓国からみれば、その主張は、韓国で認められている事実とは異なった事実に基づいた主張にしか過ぎない。それによって、未来永劫、韓国の考えを変えることはできない。
異なる歴史認識がぶつかり合えば、お互いそっぽを向き合って物別れに終わるか、力ずくで相手を屈服させようとする争いが生まれるしかない。なんとも不毛な結果だ。


それでは、第3者からみれば、この争いはどのように映るのか。
史実を検証すれば日本が優位であるのは明らかと思っている日本人も多いのかもしれないが、真のアドバンテージは、どちらがどの程度、竹島を実効支配しているかということに尽きるだろう。
韓国は、何年も前から軍隊を竹島に駐留させている。韓国国民は皆、独島(竹島)は韓国の領土だという共通の認識を持っている。そして、韓国からは竹島へのツアーがあり、多くの人たちが定期的に船で竹島を訪れている。
日本は何もしていない。
強引なやり方とはいえ、長年の間、竹島を実効支配し続けているのは韓国であり、多少の抗議行動を起こしたとはいえ、結果として日本はそれを黙認してきた。国際的にみれば、分が悪いのは日本のほうだ。


日本にとって重要なことは、どうすることが日本に利益を生むことができるのか考えることだ。竹島が歴史的に日韓どちらに属するものなのかということで争うことではない。


では、日本にとって守るべきものは何か。まず、竹島近海を日本の船舶が安全に航行し、さらには、そこで安全に日本人が漁業を営む権利を確保することだ。たとえ韓国が竹島を領有することを前提としても、その権利を確保すべきである。
現状では、竹島は韓国のものではないかも知れない。しかし、このままでは、いつまで待っても漁もできないままだ。
結果のみえていることに拘る必要はない。竹島の領有とさまざまな権利とを一括りにした硬直した考えは、捨て去った方がよい。
外交の目的とは、自国の利益を求めて他国と交渉を行うことである。そして、自国の安全を確保することである。自国民に何の利益も与えることなく、しかも自国民を危険に導くような外交に何の価値があるのだろうか。