2014-01-01から1年間の記事一覧

 「奪われた野にも春は来るか」鄭周河(チョン・ジュハ)写真展に行く

写真の中の、もとより人影の乏しい、あるいは、意識的に人影を排した山間や田園の景観は、穏やかで、静かで、拍子抜けがするくらいありふれた日常的な風景にみえた。 地震や津波の爪痕がくっきりと残された写真を視なければ、福島県南相馬市周辺の地域で撮ら…

まど・みちお さんを偲ぶ

「耳からね、こんなところからね、毛が生えているんですよ。『これは、詩にするしかない!』と思いましたね。」と、詩人は、嬉しそうに語っていた。 老いていく自分と、その自分の中から新たに生まれてくる耳毛という生命の息吹。その対比の面白さと、自分の…

 ソチ五輪のフィギュアスケートを観て考えたこと

ソチ五輪フィギュア男子フリーの最終組の演技が進むにつれ、苛立ちがつのっていくのを感じていた。この満たされぬ思いは、いったい何なのだろう。 緊張感のためか、リンクに上がる選手が次々に失敗していく。こんな最終組は、あまり見た記憶がないなぁ…、と…

 『ペコロスの母に会いに行く』〜人と記憶〜

見当識という言葉をご存じだろうか。 見当識とは、自分を取り巻く環境の中で、自分が置かれた状況を正しく認識する能力のことである。 すなわち、時間の流れの中で「今という時」を感じ、自分が存在している「場所」を知り、さらに、周りの人と自分との間に…