世界陸上2007を観ながら思ったこと


小学生の頃、運動会で一番みんなが盛り上がった競技はクラス対抗リレーだったように思います。今はクラス全員で走って速さを競うことが多いようですが、私が小学生の頃は、クラスで代表を4人決め、4×トラック1週で競ったものでした。
運動のできる子は、当時ももてはやされていましたが、そのなかでも運動会のクラス対抗リレーで1番速い選手は、「The King of 運動のできるやつ」というか、とにかく別格の扱いだったように思います。
陸上に関しては、競技経験もなく、ずぶの素人である私ですが、オリンピックの陸上競技世界陸上を観ていると、いつも自然と心が躍るのを禁じ得ません。小学生の頃、クラス対抗リレーをワクワクしながら応援していたあの頃の気持ちが甦ってくるのです。私の中では、タイソン・ゲイも学年一足の速かったY・T君も、やっぱり憧れのヒーローなのです(時にそのはしゃぎっぷりが痛くも映る織田裕二氏も、私と同類なのかも知れません。そんな織田氏のこと、嫌いじゃありません)。


男子100m準決勝が終わったあとのインタビューで、言葉にならず泣き続けた朝原宣治選手の姿に心がうたれました。
競技の第一線から退くという寂しさ、レースでベストの走りができなかった後悔、長年の苦労の思い出、自分に送られている温かい声援への感謝……。いろいろなことが意識の中を駆け巡っての涙だったと思いますが、自分でも涙の本当の理由は分からなかったのではないでしょうか。
自分でもよく分からないけど、とめどなく涙が出てくるという経験が私にもありました(前の職場を辞めた時のことでした)。4月のエントリで、そのときの気持ちを振り返って分析してはみたものの、本当のところはよく分からない。ただ「終わった」という感覚だけが湧き上がってきていたのを思い出します。
世界レベルの朝原選手の涙を自分の経験に照らして推し量るというのは甚だ僭越ではありますが、あの瞬間、朝原選手も自分の全てをかけて打ち込んできたものが「終わった」という感覚をしみじみと感じていたのではないでしょうか。
それにしても、クラス代表にもなれなかった素人の私が言うのもなんですが、一次予選での朝原選手の走りは、これまで観てきた中で最高の走りだったと思います。「ラストで流しさえしなければ……」と思わないでもありませんが、きっと記録よりもファイナル進出が、彼にとってとても大切なものだったのだろうと思います。


ハンマー投げ室伏広治選手は、予選から表情に精彩がなく、お腹周りもだぶついているように見え、まだ調整段階であることがありありと感じられました。
が、成績が振るわなかったとはいえ、シーズンベストも出たことだし、現段階ではそれなりに自分自身で納得がいく成績だったのだろうと思います。
全身のエネルギーを爆発させるかのような最後の一投で大逆転したティフォン。素晴らしいパフォーマンスでした。そして、彼のウイニングランに併走して付き合った室伏の笑顔が、とても清清しく爽やかでした。
競技とは全く関係のない話ですが、以前TBSの『スポーツマンNo1決定戦』で証明されたように室伏の運動能力には、とてつもないものを感じます。
野球親父の私としては、彼が野球をやっている姿をぜひ一度見てみたいと願ってやみません。もし、彼が幼い頃から野球をしていたら、きっとA.ロッド以上のメジャーリーガーになっていたのでは……と想像してしまいます。


男子1万メートル決勝も心に残るレースでした。
ラスト近くでケニアのマタシ、エチオピアのシヘネがそれぞれ一度ずつトップに立ちましたが、そのとき、肉食動物に追い詰められて必死で逃げる草食動物を連想させるような怯えた表情をトップに立った彼らが見せたのが強く印象に残りました。
その後のベケレのラストスパート……。マタシやシヘネの表情の理由、納得させられました。圧巻でした。まさに血が沸騰するような興奮を覚えました。


日本人選手の成績が振るわないことは残念ではありますが、超一流のアスリートたちが、世界一あるいは自分のべストのパフォーマンスを目指して必死に競う姿は、本当に見応えがあります。世界陸上はまだ中盤。これからも贅沢な夜を過ごさせていただけることに感謝しています。