イチローにみる危機管理意識


どういった職業でも危機管理ということは重要な問題である。
「Aを行えば、当然Bが起こる」というようなケースでも、Cが起こったり、Dが起こったりする可能性は稀ながら存在する。CやDが起こった場合にどう対処するかをあらかじめ想定したり、全く想定範囲外の事象が起こった場合にどうするかまで、考え得る限り対策を考えておいたりすることが危機管理ということだ。
しかしながら、Aを行った場合Bばかり起こるという日常に慣れっこになっていると、突然、Cが起こった場合、対処ができなくなる。そのため、Aを行う場合、常にCやDが起こった場合のイメージをトレーニングしておくことが危機管理意識を持つということであり、常に危機管理意識を持つ者こそプロフェッショナルと呼ばれるに相応しい。


ブログでは随分と野球のことを書いているので、野球ばかり観ていると思われている方もおられるとは思うが、現在の仕事に就いてから野球を見る機会は意外なほど少ない*1 。 嬉しいことに、WBCでは早朝、昼休み、休日、祝日などに日本の試合があり、比較的じっくりと観戦することができたので、これまで気づかなかったことで気づいたこともある。
ご存知の方も多いと思うので、今更ながら恐縮なのだが、それはイチローの守備についてだ。
打球の落下地点に入るのが、おそろしく早いことにも驚いたのだが、何よりも感心したのはその捕球体勢だ。
ランナーがいないとき、当然ながらタッチアップはない。そういったときでも、殆んど必ず、イチローはグローブを着けた左手を前にした半身の体勢でフライをキャッチしていた。すなわち、必ず右肩をひいた投球体勢に即入ることができる形で球をキャッチしているのだ*2 。 いついかなるときもそうすることで、いざ捕殺が要求される局面で、動物的に、反射的に捕球‐送球という一連の動作に素早く入ることを可能としているのだろう。
イチローのレーザービームは、けっして肩の強さやコントロールだけが生み出しているのではない。いついかなるときも危機に対処することをイメージし、訓練し、習慣化することで、無意識下でも対処できるレベルにまで達することを目標とした、危機管理意識の高さの賜物だと思う。


予見され易い結果だけを考えて日常の業務をこなしていないだろうか。たとえ確立的には低いといっても、起こり得るあらゆる可能性に俊敏に反応することを目標としながら、日常の業務をこなしているだろうか。
日ごろの仕事ぶりを大いに反省させられたイチローの外野守備であった。

*1:とはいっても、観ていないことを書いたことはないつもり。

*2:「何を今更」とか「そんな外野手は他にもたくさんいる」と仰る方もおられるかも知れないが、とにかく私はそれを観て驚いた。