国語辞典の怪


ときどき子供たちと一緒にweb pageを見ることがある。いつだったか、娘とwebの記事を読んでいたとき、何度も読みかけのままスクロールされたことがあった。注意すると、「おとうさん、遅いよ」と笑いながら怒られた。「お父さんはじっくり読んでいるからだよ」と応えたものの、ディスプレイに映された内容は、理解するのにそれほど時間がかかるものでもなかったように思う。
ディスプレイと立ち位置の関係、内容の吟味の仕方、はたまた老眼の進み具合などの原因はあるにせよ、私はwebを読むのが子供たちに比べて遅いようだ。というか、横書きのものを読むのが遅いことに気がついた。


外山滋比古氏の著書 『大人の日本語―30歳からの「絶対語感」の磨き方』 の中に縦書き、横書きについて書かれた「立つか、寝るか」という章がある。それによれば、「もともと、日本の字、漢字は、縦に書き、読むようにできている」そうである。

……文字を読むには、視線と直角に交わる線が手がかりになる。縦に読むことばでは、横線で文字を識別する。
  鳥と烏  末と未
など、横線一本で、区別がつくようになっている。もっともはっきりしているのは、
  一 二 三
である。横読みをするヨーロッパのことばでは、
  Ⅰ Ⅱ Ⅲ
とするのである。横から見れば、視線は横線*1と直角に交わって合理的だ。ほかの、
  n m i l
なども、縦線で文字が区別されている。日本語と九十度違うけれども、文字構造の原理は同じである。

例を見れば、なるほどと思わず唸ってしまうが、何かうまくごまかされたような気がしないでもない。


そういえば、先日ちょっと驚いたことがあった。
中一の時から使い慣れた、某社の国語辞典の装丁がばらばらになりそうだったので、新しい辞書を買おうと本屋に立ち寄ったときのことだ。使っていたのと同じ会社の、新しい国語辞典を手にとって開いてみると、横書きで書いてある。英和辞典を眺めているような、なんとも妙な気分になった。あまり辞書の類を置いていない本屋だったが、ちなみに、他社の国語辞典では、確認し得た限り、縦書きで編集していたので、今は横書きが主流になっているわけでもないようだ。横書きで編集していることについては、さも当然のことであるかのように、巻頭の解説でも触れていない……。


誰か理由を教えてくれ。

*1:縦線?