障害者自立支援法案のその後


小泉自民党の圧勝で終わった前の衆院選
郵政民営化法案をはじめ、前国会で成立しなかったいくつもの法案が再提出され可決されていくことだろう。
「これこれの案件は国民にとってぜひ必要なことだ」「私は全力でこの案件を実現する」と巧みにアピールすることで、言行一致した本気の政治家といったイメージを知らず知らずのうちに国民に浸透させ、選挙に勝った小泉首相ではあるが、郵政以外の個々の政策はそれぞれの道の専門家に丸投げして立案しているという印象が強い
特に官僚主導で作られた政策は、経済性を重視するあまり社会的な弱者が切り捨てられる可能性が懸念される。


障害者自立支援法案も心配される法案の一つだ。
法案を読んでみると、介護保険法とのアナロジーでお手軽に作られた法案という印象が強い。
法案に関して私なりに考えた問題点については7.28のブログですでに触れたのでここでは簡単に述べる。
この法案では、障害者が日常生活を送るための介護に要する費用(自立支援費)の一部を一定の割合で自己負担する(応益負担)ことが提案されている訳だが、そもそも、この障害者の日常生活(食事をする、トイレに行く、入浴をする等)への介護が果たして障害者にとって「益」といえるものであるかどうかということが、障害者の参加できる社会を考える上での大きな哲学的な問題である。
費用効率を考えることは、政策を実現する上でとても大切なことと承知はしている。
しかし、どういう社会を目指すかという構想とそれを支える哲学がまず考えられるべきなのではないか
障害者自立支援法案には、その哲学が全く感じられない。


個々の障害者の能力に応じた職業の斡旋や職種の開発、扶養者の存在なしで経済的に自立できるための障害年金等の制度の充実など福祉政策として実現すべきものは多い。
しかし、財源の問題が付き纏うため、行政として施策出来ることには限りがあるだろう。
自分の能力や経済力などに応じて、社会を構成する人々が自分に出来ることを考え、NPOなどの組織を通じて障害者を支援する……そんな豊かな社会が実現されることを願っている。


最後に二編のメッセージを紹介する。
一つはALSという難病をかかえながら衆議院愛知三区より立候補した藤本栄氏のもの、もうひとつは作家でありシンガーソングライターの朝霧裕氏のものである。
少しでも障害者自立支援法案や障害者の参加できる社会について考えていただけたら幸いである。