田尾監督解任に思う


東北楽天ゴールデンイーグルス田尾安志監督が解任された。
開幕当初からの三木谷オーナーの動きから、これは十分予想されることではあったとはいえ、イーグルスファンの8割以上、ひょっとすると9割近くが田尾続投を支持している現状を考えると経営的には明らかにマイナスの選択である。
冷静さを欠いたとしか言いようのない決断が下されたことがどうにも腑に落ちない。


強い球団=人気球団、あるいはスター選手を要する球団=人気球団というシンプルな図式は、ある程度成立すると思う。
しかし、いつまでも強い球団、いつまでもスターのいる球団など存在しない。
弱い球団がいかにしてファンに支持されるか、この難しい命題を克服しない限り安定した球団経営は成り立たない。
強い時も弱い時も変わらず球場に足を運んでくれるファンに支えられた球団。
それこそが、経営者として目指すべき方向ではないか。
経営努力に関してはさておき、阪神タイガースなどはそれに成功した稀有な例だと思う。


成功へのキーワードは地域密着だと思う。
先ほど例に挙げた阪神タイガースは関西のひとつの文化といっていいほど、大阪をはじめとする関西人の心の中に根付いた存在である。
東北楽天はどうだろう。
イーグルスは新球団という利点を生かし、これまで野球に無縁であった人々もうまく支持層に取り入れることに一応の成功を收めているように思われる。
開幕当初、おそらく仙台の人は野球ファンでも、礒部、岩隈、田尾くらいしか顔が分からなかったに違いない。
それが今では多くの選手たちの顔が仙台の街に浸透している様だ。
これには、楽天という企業の努力もあっただろうが、イーグルスファンの横のつながりを広げようとする努力や地域に積極的にとけこもうと頑張ったイーグルスの選手たちの努力があったことを見逃してはいけない。
戦力を見て、試合を見たイーグルスファンの誰もが100敗前後の負けなど早くから覚悟していたことだと思う。
それでも、ファンは皆この東北の地にようやく誕生した東北楽天ゴールデンイーグルスを力いっぱい応援してきた。
その仙台のファンの声を無視して後足で砂をかけるようなこの解任劇が、この地での今後の球団経営にマイナスに作用するのは明らかである。
リサーチが甘かったのか、すぐにファンの熱も冷めてこんなことなど忘れてしまうだろうとたかを括ったのか、プライドをいたく傷つけられた三木谷オーナーの暴走を誰も止められなかったのか……。


案の定、解任反対の署名運動などイーグルスファンが動き出している。
イーグルスファンを辞めます、という趣旨のコメントも数多くweb上で目にした。
しかし、ファンは今こそ冷静に考えて欲しい。
監督の解任劇は、成績が不振である度に繰り返されるものである。
その度に球団を見捨てるのか。
今年ペナントを戦った選手たちの多くは、来季も仙台の地で、イーグルスで戦うのである。
ボロボロになりながら、いつ終わるとも知れぬ試合を幾度も歯を食いしばって戦ってきた選手たちである。
その戦いの中から、ようやくローテーションも確立してきたところである。
楽天に腹を立てるのは尤もだが、どうかこの選手たちだけは見捨てないでいて欲しい。


普通に考えれば、おそらく来季も楽天ゴールデンイーグルスは最下位だろう。
その時三木谷オーナーはまた監督の首を切るのだろうか。
それとも、球団を手放すのだろうか……。