15秒ルールってなんだろうね


私の周りにいるプロ野球ファン(といっても、家族のことだが……)の声を聞くと、15秒ルールには軒並み反対のようだ。
1球あたりの持ち時間を短くすれば、労せずして試合時間の短縮に繋がるという発想には、あまりに単純で能天気な感じを受ける。ペナルティーによりカウントを悪くし、四球での出塁が頻発すれば、かえって試合時間は長くなってしまうかも知れない。
確かに15秒といえば、打者の様子やその他のいろいろな状況を観察したり、打者のその日のバッティング内容や過去のデータを思い出したり、自分の投球内容を振り返ったり、その他様々なことを思い描いた上で投手が次の1球を決断するのにはあまりに短い。
ああだこうだと思いを巡らしながら、次の1球を予想する野球ファン(私もその1人だが)から空想する楽しみや予想が的中する喜びを奪い取るほどの短さかも知れない。
とにかく野球ファンが概ね反対していると仮定すれば(仮定するにはあまりに雑なサンプリングであるが)、いったい誰のためのルール改正なのだろうかと思わないわけでもない。


けれども、(ランナーのことを考慮に入れなければ)その日の自分の一番いい球をどう見せるかということと打者の狙い球が何であるのかということが投球の組み立ての肝であるなら、そして、15秒がそれに絞って考えるのに十分な時間であるなら、余計なことを考えず、「えいやっ」と思い切りよく投げ込んだほうが、面白い野球になるような気もするのである。
試合時間が短縮されれば、帰りの電車の時刻も気にしなくて済むし、新たに自由に使える時間を手にいれることもできる。シンプルでスピーディーな野球が人々の眼に新鮮に映れば、新たなファン層を獲得できるかも知れない。
文句を言っている野球ファンも、ルール改正になったからといってそれだけで野球から離れていくことはあるまい。ファンが離れていくのは、野球が本当につまらなくなったときだろう。


果たしてどちらが野球を面白くするか。私は野球が面白くなる方向に賛成だ。
実のところ、エントリを書き始めるまでは反対という立場から書くつもりだったのだが、やってみるのもありだなと今は思い始めている。
そんなことできるはずはないと思っている投手は大勢いるかもしれない。野球ファンの多くも、投手心理を考えれば、なんと馬鹿なことをと思っているかもしれない。
でも、本当にそうだろうか?それが、ただの思い込みでないと言い切れるのか?


ダルビッシュが急先鋒となって反対ののろしを上げたのを皮切りに、現場の投手やベンチからも続々とルールの効果を疑問視する声があがり始めているようだ。
ルール改正の際、現場の声を十分に聞いたのかという疑問は残る。現場での理解をまず求めることなしに改正を進めたのであれば、それは野球のプロフェッショナルたちに敬意を欠くやり方であったと言われても仕方がないが、この点に関しては、調べてもいないし調べる気もないので、私はコメントできる立場にない。
ただ、今になって現場から反対の声が出ているところをみると、あまりうまいやり方ではなかったのだろうと推測する。


確かに、ルール改正が個々の投手の個人成績には少なからぬ影響をもたらすかもしれない。
そうであるかもしれないが、一流の球を持っている一流の投手が「こんなルールでは投げられない」と初めから投げ出してしまうのも、ナイーブに過ぎるように思える。ぐちゃぐちゃ考える野球から、力と力のぶつかり合いの野球へ大きく変わるチャンスになる可能性だってあるし、そうなれば、力のあるものほど有利になる。
過剰に神経質になることは、間違いなくマイナスに作用するだろう。


結果を恐れていては何もできないでしょう。
たとえうまくいかなかったとしても、プロ野球に決定的なダメージが生じるとは思えない。
しくじれば、改良点を見つけてやり直せばいいんじゃないの。
やってみなければ、いいか悪いかはわからないよ。
だったら、やってみようよ。