本当の大変化に俺はついていけるか? 


ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる (ちくま新書)』を読んだ。
ブログを書き始めて早や9ヶ月。気に入ったエントリーに時々コメントを送る以外、リンクを増やす努力をするでもなく、これまで細々とやってきた。間違いなく、私はブログ界ロングテールの真只中にいる。
最近でこそやっと、「きっと誰かに声は届くはず」と思いつつ、エントリーを書くこともあるようになったが、もともとは、自分の中に溜まったもの*1の捌け口として始めたものだ。
もし、ブログがなければ、私の身の回りや社会の中で起こる様々なことに対して、声をあげることなどなかっただろうし、出逢うはずもない人たちと知り合う機会もなかっただろう。そして、エントリーを書くために自分の考えをまとめたり、本を読んだりすることによって、幾分か知的成長もあったように感じている。そういった意味では、随分とブログとの出逢いには感謝している。


気に入ってよく覗いている他所のブログをみていて、羨ましく思うことがある。
エントリーの内容が勉強になるのは勿論だが、良いブログには良い読者がつき、多くの優れたコメントが寄せられる。そのコメントにまた応えることによって、また、エントリーの主題が更に発展、成長していく……。
著者の梅田氏も「知的生産の道具」としてのブログの効用として挙げているが、このようなマス・コラボレーションの結果として、テーマの創発的発展が期待できることが、私にとってはブログの最大の魅力だ。
fladdict.net blogのいう「自分がお金に変換できない情報やアイデアは、溜め込むよりも無料放出することで(無形の)大きな利益を得られる」という指摘は、まさにブログを書いてみて初めて実感されることだと思う。


ロングテールの中に優れたブログは幾つもあるだろうし、恐竜の首に属するブログを遥かに凌駕するブログがそこに埋もれていても何ら不思議はない。
が、そこは、玉石混交というよりむしろ、石また石の世界だ。検索エンジンを駆使しても、そこの中から、付き合い続けようと心から思える気に入ったブログを見つけ出すことは困難だ。梅田氏が主張するように、検索エンジン以外の何らかのブレークスルーが必要だ。
それをやってくれそうなのは、おそらくグーグル*2しかないだろう。
けれども、グーグルはロングテールを追及する企業には違いないかもしれないが、残念なことに、ロングテール部分を現状では市場としてしか利用していない。勿論、アドセンスを通して、それを個々の小さな市場として開発したことが、物凄いことであるのは疑いのない事実ではあるのだが……。
そして、グーグルという企業がこの本から感じられるような企業であるならば、グーグルが信用しているのは、Wisdom of Crowdsではなく、Will of Crowdsだけのような気がする。「全体」の意向に沿った経営戦略は、着々と立てていく。そして、「全体」の英智を信用せず、「ベスト・アンド・ブライテスト」の英智を信用する。
なればこそ、ロングテールの中から玉を拾い上げる技術にグーグルは関心があると私は睨んでいる。
もし、著者の指摘するように、グーグルが、「世界中の情報を整理しつくし」、「知の世界を再編成する意思を持ったとてつもない怪物」であるならば、そして真の「ベスト・アンド・ブライテスト」を信奉する会社であるならば、ページランクアルゴリズムのようなウェブ上の民主主義で選ばれる情報に飽き足らず、ロングテールの中から本当に価値のある玉を拾い上げる画期的ブレークスルーを見出してくれると信じている。グーグルが、真にグーグルらしくあるためには、けっして玉を自然淘汰させてはならない。
きっと、それはネットの向こう側に送られてくる膨大な個人情報、特にネットの向こう側に届けと発せられる個の声に応える形でアドセンスのように送り届けられる、個に向けた情報であるような気がする。
ロングテールの中の玉石混交に拘らなくても、検索エンジンさえ駆使すれば、恐竜の首に存在する必要な情報は手に入ってくる。ソーシャル・ブックマークやソーシャル・ネットワーキングを利用したり*3、お気に入りのブログからリンクを辿ったりするのも1つの方法だろう。
それでも、そこには拘りたい。私自身が、ネットの向こう側へ届かぬ石つぶて(誰か、中から玉を見つけてくれ〜)を投げ続けているひとりだから。そして、一所懸命ネットの向こう側へ向けて、玉の声をあげ続けているたくさんの個が存在しているはずだから。


まだ、書き足りないことはあるが、別の機会にしようと思う。『ウェブ進化論』はネットに関心のある人は勿論、ない人にもぜひお勧めしたい1冊だと思う。

*1:別に表現したいものが溜まってくるわけではない。溜まってくるのは持って行き場の無い鬱憤や怒りだったりする。

*2:ウェブ進化論』をまだお読みでない方はid:umedamochio:20060223をご参照ください

*3:私自身に関して言えば、興味はありながらも、どちらもまだ利用していない。信頼する人のものを大いに利用するべきだろう