清水宏保の姿勢に感動


その日の清水のスタートは、かつて無敵を誇っていた頃と同じように見えた。しかし、スピードに乗っていかない……。その姿は、この日、奇しくもTV で解説をしていた堀井学ソルトレークでの姿を想い出させた。
レース後、清水は結果を振り返りながら淡々と語った。不調のシーズンにオリンピックがあたってしまった事、靴のこと、自らのスケート技術のことなど。
清水は、絶頂にあるときでも、けっして満足することはなく貪欲に自分のスケートを変えてきた。不調といわれた今シーズンも、自分にできることを一つ一つやってきたのだろう。そして、何よりも驚くのは、彼の眼にはその一つ一つの具体的な究極の理想像がくっきりと捉えられているというところだ。トリノのレースを終えた後の清水のインタビューからは、むしろ、さばさばとした姿が感じられた。
清水の見つめているスケートは、遥か高いところにあるのだろう。年老いてそのスピードを失っても、彼はそこへ辿りつくまで、いつまでも、いつまでもスケートを続けていくのではないだろうか。
清水の学んできたものを、後進に伝えていって欲しいという考えは、そんな彼の存在の前では無意味なものに違いない。この不屈の魂を持った超人をこれからも応援していきたい。