野球は知らない?が、商売はさすがだね


阪神を例に今後のプロ球団の目指す方向を考えようと思ったのだが、その前に東北楽天の黒字についてちょっとだけ触れたい。


楽天県営宮城球場(現フルキャストスタジアム宮城)をホームに決めた際、球場改修費を負担する代わりに球場および球場敷地内の管理運営を独占できる権利を手にしている。
公営球場を借りることで球場使用料を安く抑えられたこと(仙台は5000万、神戸は6000万、広島は9000万、それに比べて大阪ドームは6億とも言われている)も馬鹿にならないが、さらにこの管理権限を手に入れることによって、球場での広告収入、飲食物やグッズなどの売店収入を全て球団收入と出来たメリットは大きい。
仙台が新規参入の地として選ばれた背景には、こうした事情も考慮されてのことだったと考える。


フルスタに行かれた方には分かるだろうが、球場周辺はなかなかの賑わいで楽しく作られている。来年は更に新たなコンセプトでの飲食店の出店を計画中のようだ。
県との交渉次第だろうが、許されるならば野球以外の娯楽施設を新たに設け、家族のうちのあるものは野球へ、またあるものは他の施設へといった具合に、多目的に対応した総合アミューズメント施設への発展性も考えられないことはないだろう。
しかし、エンターテインメントの選択性が乏しい地方都市にプロ野球という一大エンターテインメントを持ってきたことが成功の一因であるならば、他のエンターテインメントに手を広げることは、逆に野球というビジネスを痩せ細らせることに繋がってしまう危険性も孕んでいる。
今後のフルスタ周辺の展開を興味深く見守りたい。


楽天は球場内の看板等によって得られる通常の広告收入のみならず、イーグルスにまつわる様々な利権へのスポンサーをかなり広範に募ることで、パリーグの他チームより多くの広告収入を獲得しているようだ。新しい発想でうまいやり方だと思う。
さらに、東北でのショッピングモールの出店、売り上げは共に著しく伸び、本業の方にも相乗効果をもたらしているらしい。
しかし、練習の見学を有料化したことが田尾前監督の逆鱗に触れたように、球団を応援するファンに対してのサービスを金に換えるやり方は、地域でのファンの獲得という観点からは賢い方法とは言えない。
ファンあってこそグッズ収入*1も見込めるし、ファンという消費者を見込んでこそスポンサーも付く。
福岡ダイエーホークス(現福岡ソフトバンクホークス)は、無償でのファンサービスを積極的に行うことで福岡の街に浸透し、現在の根強い人気を得た。
そう言えば、今の楽天とは対照的に、下位で低迷していても王監督を辛抱して変えなかった(新人監督の田淵でも3年指揮を執った。)
商売、特にIT業界では先手を打つスピードは大切である。
けれども、楽天は商売の展開を考えるだけでなく、プロ野球を応援する人の気持ちももう少し理解するべきであったと思う。
球団経営者にとって提供する商品で最も重要なものは野球であり、最も大切な顧客はファンなのだから。

*1:新球団の場合、ファンは誰一人球団に関するグッズを一点も持っていないため、ファンは全て新規ファンであり、初年度のグッズ収入は当然多くなる。2年目は画期的な新商品の開発でもない限り、落ち込むことが予想される。開幕前の楽天は確か2年目以降の増収を予想していたように思う。