明日のために


田尾監督解任の経緯、理由などについて楽天から正式のコメントがなされたかどうかは知らないが、私なりに楽天の言い分を考えてみた。
今回の楽天のケースは、おそらく成績不振の責任を問われてのことではないだろう。
イーグルスの選手には失礼な言い方だが、どんな歴戦の名将でもあの戦力でペナントを勝ち抜くことは不可能である。今のイーグルスを率いて成績不振の責任を取らされるとしたら、監督はたまったもんじゃないし、そんな理由で監督を解任していたら、監督の受け手がいなくなることは自明である。
楽天のオーナー、フロントがいかにプロ野球を知らなかったとはいえ、気の遠くなるような戦力不足には遅くとも4月が終わらないうちに気が付いているだろう(もし気が付いていなければ間抜けな話だが……。)
解任の理由はただ一つ、たとえ戦力を補強しても田尾では来季も満足のいくチームの成長が期待できないという判断だろう。


チームの補強、成長という観点からはこの判断も「あり」だと思う。*1
しかし、東北楽天ゴールデンイーグルスという球団の今後の経営を考えた上ではこの判断は「なし」だ
前のエントリーにも書いたがファンに支持されない決定は、確実にファン離れを招く。


ショッピングモールなど、IT界では次々と新たな手を打って成功してきた楽天はきっとこう考えているに違いない。
今は弱い楽天でも支持されているが、来季も負け続けるようなら、それこそ確実にファンを失う。来季はもっと確実に勝ち星を伸ばせる監督を招聘するべきだ。」
普通のプロ野球ファンに支持された他のプロ野球球団ならば、この考えは通用するかもしれない。
フルスタで観戦しての印象だが、失礼な言い方を許していただければ、イーグルスの支持層はプロ野球にこれまで馴染みがなかった所謂しろうと層が大変多いように思う。
そして、webを通じての印象では、新しいプロ野球の形を期待して、既存のプロ野球球団から新たに東北の地に誕生したこの球団のファンへと乗り換えたコアなプロ野球ファンもまた多いように思う。
前者には球団に対する身内意識が強く、今のところチームの勝敗よりもチームが成長して行く姿を温かく見守ろうという意識が強い。
これから見守っていこうという愛すべき身内の解任がいきなり言い渡されれば、言いようのない不快感を与えた結果、球団の支持を失うばかりか企業イメージも地に落ちたに違いない。
これからのプロ野球球団はこういうファンを大切にすることで地域に根ざし、さらにプロ野球人気を盛り立てて行くことが求められていると思うのだが……。
せっかく良いファン層を得て、良いスタートをきったのに勿体ないことをしたと思う。
そして、後者には理不尽な既存の手法がまた用いられたことで深い失望を与えたであろう。
先手を打ったつもりの一手は、とんでもない悪手となる可能性を孕んでいる。
球団経営を考えるならば、東北楽天がどういうキャラクターのファンに支持されているのか十分にリサーチした上でその支持層の考えをまず尊重し、必要な補強をした後、どんなに早くとも来季の結果を待って初めて監督解任を考えるのが賢い選択だったのではないだろうか。
島田球団社長は今季を振り返り球団経営の成功を語ったそうだが、最後の最後になって、しでかしてしまった損失は限りなく大きかったのかもしれない。


昨年の近鉄オリックスの合併騒動からも分かるように、安定した球団経営が成り立たなければ、プロ野球の明日はない。
前のエントリーにも書いたが、弱い時にも客が呼べる球団こそが経営者にとって理想の球団である。
阪神タイガースを例に次のエントリーで考えてみることにしよう。

*1:私は今季の内容を考えた上で田尾監督続投支持派である