まど・みちお さんを偲ぶ


「耳からね、こんなところからね、毛が生えているんですよ。『これは、詩にするしかない!』と思いましたね。」と、詩人は、嬉しそうに語っていた。
老いていく自分と、その自分の中から新たに生まれてくる耳毛という生命の息吹。その対比の面白さと、自分の中に存在する生命力への驚き、感動、喜び。まど・みちおの表情や言葉には、稀有な感性を持つこの詩人の魅力が溢れていた。
2010年頃に視たNHKスペシャルを、おぼろげな記憶をたどりつつ書いたので、正確ではないだろうが、概ね、このような内容のインタビューがあったと記憶している。
同じ番組で紹介されていた「さかな」という詩も、凄かった(著作権に疎いので、引用を差し控えさせてください。ご興味をお持ちの方は、まど・みちお、さかなで検索されるとヒットすると思います。)この世界というか、宇宙の摂理にも通じる、深い洞察に満ちた哲学的なこの詩も、きっと、食卓で魚をつつきながら思い描いたに違いない。目を輝かして嬉しそうに魚をつつく、まど・みちおの顔を想像すると、自然と笑みが浮かんで温かいものが胸にこみあげてくるのを感じる。


そういえば、妻は、「一年生になったら」という詩は、あまり好きではないらしい。「ともだちひゃくにんできるかな」というところに「友達は数じゃないっ!」とつっこむのが彼女の常だが、なるほど、ごもっとも。
けれども、歌詞全体を読んでみると、大勢で、心を一つにして行動したときの爽快感、痛快さを謳った詩ではないかと思う。今度、全文を読んでもらって感想を聞いてみよう。


まど・みちお
あなたの詩がほんとうに大好きでした。
謹んでご冥福をお祈り申し上げます。